『秋日和』

小津週間・四夜目。

監督:小津安二郎

未亡人となった母と適齢期の娘の物語。法事で始まり慶事で終わるホームドラマ。この親子に何かと世話を焼こうとする3人のオヤジども(佐分利信中村伸郎、北竜二)が最高。みんな渋くきめてはいるが、やっていることは、スケベ談義とセクハラ発言ばかりというのが笑える。ちなみに会社以外の場所では必ず酒を飲んでいる(小津映画は飲み食いの描写がやたらと出てくる)。ヒロインでは清潔で地味な司葉子よりも活発で陽気な岡田茉莉子の印象が鮮やかに残った。それと来客を案内するOLの役で岩下志麻がちょっとだけ顔を出している(若い!)。最後、娘が去り、独りになってしまった原節子が薄暗い部屋でひっそりと佇む姿が切ない。『東京物語』の笠智衆といい、こういう時間が静止したような異様な美しさを持ったショットに小津安二郎の凄さを見る。

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さて、盤質。画質は良好。『お早よう』と同じく細密感のある引き締まった画です。アグファカラー・フィルムのこってりした独特の色合いも良いですね。音もこれまでの中で一番クリアに感じました。