『許されざる者』

監督:クリント・イーストウッド

勧善懲悪も痛快も爽快もない、厳しさと曖昧さと暴力だけが存在する許されざる者達の世界。徹底してシンプルな演出と映像、だからこそ備わる映画の風格。殺しの仕事を終えたイーストウッドジェームズ・ウールヴェットが小高い丘の上で休息していると、はるか遠くに馬がやってくるのが見える。その馬が到着するまでを、ほぼリアルタイムで二人の会話を挟みながら描いていく場面の素晴らしさ!イーストウッドの演出は地味ながらも映画の旨味に溢れている。最後の酒場のシークエンスは何度観てもシビれる。静かな凄味と緊張感、闇の深さと雨の質感、イーストウッドの表情・・・。暴力の論理を否定も肯定もせず、冷やかな眼差しで明示したニヒルな西部劇。

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盤質。ややシュートが目立ち、S/Nも決して良いとは言えませんが、解像度と発色は合格点。日本語吹替えの出来も素晴らしいです。やっぱり山田康雄イーストウッドは絶品ですね。