『欲望という名の電車』

監督:エリア・カザン

あまりにも激烈な演技とドラマに観終わってグッタリしてしまった。初めは生活に疲れたちょっと神経質な中年女性という印象を与えるヴィヴィアン・リー(あのスカーレット・オハラがここまで老醜を晒すなんて!)。しかし、それすらも仮面であったかのように徐々に病める精神をあらわにしていくスリリングでグロテスクな人間描写、その"負の熱気"には圧倒された。筋肉オバケのマーロン・ブランドは肉体だけでなく、演技の存在感も抜群にある。窮屈で息苦しい室内劇にあって、彼のダイナミックな動きと叫び声は映画にある種の躍動感をもたらしている。当時の厳しい検閲制度によって最後はやや分かり辛くなってしまっているものの、人間に内在する凶暴さと脆さという二面性が、きわめて劇的で繊細な演出によって描かれている見事なニューロティック(異常心理)映画だと思う。