『神の道化師、フランチェスコ』

監督:ロベルト・ロッセリーニ

牧歌的な丘陵地帯を舞台に、フランチェスコとその弟子たちの質朴な共同生活をユーモラスに伸びやかに描いた10篇のエピソードからなる映像叙事詩。宗教映画というとベルイマン作品のような厳しくて堅いイメージを想起させるが、本作にはただ大らかで温かな人間愛に充ちた一種のユートピア的な世界が広がっているだけである。映像と演出はシンプルでありながら力強さがあり、映画の快楽がギッシリと詰まっている。雨と風と空の描写、鳥と会話をするフランチェスコ、4人の修道女がゆっくりと丘を下ってくるロングショット、夜の森を行く業病の旅人、暴君ニコライオの鎧の造形、風に舞うポプラの花(?)、など素晴らしく印象的なショットが沢山出てくる。全編に漂う滑稽感やユニークな人物造形には脚本を手掛けたフェリーニの色が濃く感じられた。これは傑作です。

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盤室。若干シュートが目立つくらいで、かなり上質の黒白映像だと思います。階調も豊かですし、解像度も高いです。PALマスターですが音のキーやテンポの違いも気になりません。画面は上下左右に少し黒味が入っているので完全ノートリミング仕様のスタンダード・サイズなのでしょうか。