『フェイシズ』

監督:ジョン・カサヴェテス

顔は口ほどにものを言う。延々と反復描写される取り留めのない会話と乱痴気騒ぎ、喜怒の感情ばかりが乱れ交う中、ふと本心が表面に浮き出てくる瞬間の表情。人間の複雑な意識の流れが、執拗に映し出される表情のアップショットによって生々しく知覚される。まさに表情のスペクタクル。こんな映画は観た事がない。有閑マダム4人が1人の青年に翻弄されるシークエンスには、ちょっと言葉では言い表せない吸引力、面白さがある。超アップや真下から仰ぎみるような視点など奔放なキャメラワークも良いし、後半には人の輪郭が背景に溶け込んでしまうくらいの強烈な照明、まるで「白の世界」とでも言うような大胆な映像にも魅せられる。しかし、まあ何と言っても圧巻なのは主演の4人の俳優だろう。呆れるほどに凄い。特にリン・カーリンは絶品で、最後は鳥肌が立った。