『一人息子』

監督:小津安二郎

東京物語』の原型とも言える作品。理想と現実のズレに戸惑う親子の葛藤をシビアに描いている。母と息子がオバケ煙突の見える原っぱに座り込んで語り合うシーンと、夜中のちょっとした諍いの後に挿入される長い空ショットが印象的だった。小津映画は各々のショットが本当に味わい深く、豊かな映画的時間が流れている。良妻の見本のような坪内美子の慎ましい存在感も美しい。