『長屋紳士録』

監督:小津安二郎

『お早よう』の原型のような市井の小さなコミューンを舞台にした人情喜劇。いわゆる「喜八もの」だが、喜八はほとんど出てこない。キレのある会話のリズムとテンポが心地良さと滑稽味を醸し出している。飯田蝶子演じる強面の因業オバさんが、本当はとても孤独で寂しい女性だった、という展開は少々ベタだけれどもしんみりとさせられる。浜辺でのオバさんと少年を捉えたロングや、人物の不在を強調する空部屋のショットが印象的。笠智衆が唄う「のぞきからくり」もイイ味出してる!