『人間は何を食べてきたか 第5巻』

今回から新シリーズ「海と川の狩人たち」がスタート。海編2本を収録。まず1本目は400年もの間「生存捕鯨」によって暮らしてきたインドネシア・ロンバタ島の漁民たち。いや〜強烈!今までで最もインパクトのある内容でした。1,000m以上の深い海に囲まれた島なので、小魚がほとんど獲れず、鯨はまさに人々の生命を繋ぐ貴重なタンパク源になっています。「ラマファー」と呼ばれる勇敢なモリ突きが、巨大なマッコウ鯨に向って海へ飛び込む姿は、ロングショットながらも迫力満点。しかし、その一方で、捕鯨中に片腕を失った老人や、内臓に傷を負った漁夫を100キロ離れた島の病院へ運ぶ様子も捉えられ、彼らの捕鯨がまさに己の命と村人の生活を懸けた「神聖な闘い」であることが伝わってきます。外界から隔絶された、ある種神話的な雰囲気すら感じさせる世界ですが、しっかりキリスト教が伝播し、根付いているのには驚かされました。と同時に、アニミズムも当然ながら存在していて、不漁時期が続くと「山の民」の長老に鯨乞いの祈祷をしてもらうシーンが出てきます。圧巻だったのは、獲った鯨を漁夫が総出で解体する映像。前に見た豚の解体シーンが霞んでしまうほど凄まじいものでした。全身血で真っ赤に染まりながら、超巨大な心臓や肝臓を嬉々とした表情で取り出す男達を見ていて思わずクラクラっときましたね(笑)。血液や皮下脂肪(厚さ20cm!)や骨、果ては脳油と呼ばれる頭部の液体まで、すべてを取り尽す壮絶な解体作業が終わった後、残ったものは頭骨(ちゃんと軟骨の部分はくり貫く^^;)だけでした。こういうのを見てしまうと、グルメなんて何だかやましいだけのものに思えてきちゃいますねぇ。2本目はパプア・ニューギニアのマンドック島。見事な珊瑚礁の海で、様々な漁を行う海人・ムトゥを紹介しています。蜘蛛の巣を使った「凧揚げ漁」や、魚を痺れさせて獲る「魚毒漁」など、変わった漁法が出てきて興味深かったですね。男達だけで獲って楽しむ、海亀漁もなかなか見応えがありました。とにかく海が美しくて魚も豊富、こんな場所で半年くらいブラブラと気ままに過ごせたらどんなにか良いだろう。