『刑務所の中』

監督:崔洋一

ほんわかしたユーモアとともに穏やかに過ぎていく規則正しい日常。ここは本当に刑務所なのだろうか?非人間的な囚人の扱い?いやいや、大手サービス業の"教育"ほど酷くはありません。失業率が高くホームレスの多い国では、わざと犯罪を犯して衣食住が保証された刑務所に入ろうとする人が増えるというけれど、この映画を見ていると「さも有りなん」と思えてしまう。それにムショの飯が臭いというのもどうやら過去のことらしい。出るわ出るわ、次から次へと美味しそうなオカズ、お正月メニューの何たる豊かさ、囚人たちの一番の楽しみは野球でも入浴でもTVでもなく、日々の食事にあるのだ。パンにマーガリンをぬってほお張る囚人たちの恍惚とした表情、映画鑑賞会の時も夢中になるのは菓子やジュースの飲み食いである。醤油ご飯が妙に食べたくなった(笑)。全編に流れる優雅なクラシックは「刑務所=ユートピア」というシニカルな逆説をより一層強調している。