『キャバレー』

監督:ボブ・フォッシー

ライザ・ミネリの圧倒的な存在感!ふっくらしなやかな肢体、クールで情熱的な歌声、クリックリの大きなタレ目と表情の素晴らしさ。そのとてつもない吸引力は母親ジュディ・ガーランドに勝るとも劣りません。キャバレーの退廃的で猥雑な活気と、ナチス台頭という不吉な影、そして歪んだ三角関係が、ドラマティックにではなく淡々と溶け合うように描かれていく様が、静かな不安と緊張感を生み出して暗い時代の到来を感じさせます。ヒトラー・ユーゲントの青年が歌う場面の不気味な美しさも印象に残りました。楽曲ではラストの「Cabaret」が最高でしたね。身震いするほど格好良いです。そうそう、忘れてはいけないのがキャバレーのMCジョエル・グレイ。パワフルでコミカルでとことん猥褻、まさにボブ・フォッシー的世界の体現者と言うに相応しい見事なパフォーマーぶりでした。