『クラバート』 ■■■□

監督:カレル・ゼマン

日本とは違う異質の映像世界を持った東欧圏のアニメーション。非常に詩的で文学的な趣を感じさせる幻想譚です。切り絵の質感、渋く淡い色彩感、映像の静謐感、独特のユーモア感覚、優しさと残酷さ、そして最も魅力的なメタモルフォーセスという神秘現象。逃走するクラバートと少女が、鳥、魚、花へと次々に変化していくシーンは素晴らしいですね。クラバートが少女を見初める夜のシーンも溜息が出るほどの美しさ。満天の星空と透明な歌声と少女の影、まさに詩情が溢れています。この愛の童話は、しかし、被支配民族の歴史を積み重ねてきた国の寓話でもあるのです。