『遠い太鼓』 ■■■

監督:ラオール・ウォルシュ

舞台はフロリダ、しかもほとんどの場面が沼地と森の中という異色の西部劇です。50年代ハリウッド映画特有の暗鬱さこそないものの、本作には西部劇らしい無限の空間の拡がりや、青い空と雲の清々しさといったものがありません。そして極め付けは馬の不在です。主人公とその部下たち、インディアンが徒歩によって追いつ追われつの攻防を繰り広げていく展開は、西部劇というより戦争映画のジャングル物を観ているような感じでした。最後の決闘がガンファイトではなく水中でのナイフ・バトルというのもユニークですね。ゲーリー・クーパーがタフガイの隊長を渋く演じています。石鹸なしでヒゲを剃るシーンは絶品。表情も効果音も実に痛そうでイイ感じなんです(笑)。