『大列車強盗』 ■■

監督:エドウィン・S・ポーター

最初に作られた西部劇は犯罪活劇だった。興味深かったのはキャメラワークもモンタージュもまだ生まれてなく、すべてのシーンがフィックスなので、アクション描写がほとんどロングのワンショットになっているという点。強盗団が隠れている給水塔の横に列車が滑り込んでくる瞬間、列車外に出された乗客の一人が逃げようとする瞬間、森に逃げ込んだ強盗団に保安隊が襲いかかる瞬間、いずれもショットが切り替わることなく静から動の状態へと移行していく。要するにドキュメント性の高い映像になっているのだ。実際に起きた事件を再現フィルムのように見せていくこの撮影法は、劇映画というよりもニュース映画の感触に近いような気がする。そして有名なラストショット。当時の観客が大いに驚いたという映像も今観ると何てことはない、単なるこけおどしにしか見えない。現在隆盛を極めているCGは100年後(果たして映画の存在は?)の人々の目にどう映るのだろうか。ちなみに無頼漢に殴られる機関士が突如人形に切り替わるシーンは今でも十分シュールだ(笑)。