『天使のたまご』 ■■■□

監督:押井守

"物語という制度"を排除したアニメによる映像詩。難解?いやいや、これはそういう映画ではない。いろいろな解釈を各人が自由に試みて楽しむことができる*1というだけで、この作品には唯一無二の答えがあるんだ、と思って見てしまうと「分からない=難解」という落とし穴にはまることになる。何よりもまず「Don't think FEEL!」の映画で、視覚的な体験が意識の内部へ染み渡っていくような感覚が気持ち良いんだと思う。それにしても自主映画ならいざ知らず、これを商業ベースの映画でやってしまうのはスゴイ(『ビューティフル・ドリーマー』の成功で調子に乗った?^^;)。ジブリを騙して(?)大作アートアニメ『イノセンス』も作ってしまった押井守、まさに後藤喜一ばりの天才詐欺師であるw 美術とレイアウトの小林七郎作画監督名倉靖博音楽監督菅野由弘といった素晴らしい共犯者たちの存在も特筆しておくべきだろう。

*1:光瀬龍押井守との対談の中で「必ず来る破滅を予期しておののいている人間の魂」と語っている。この解釈は個人的にとても共感できた