「エヴァ復活祭」第12夜

第弐拾参話「涙」(英題:Rei?)

これまで散々焦らされてきた、綾波レイの正体に関する幾つかの事実が判明する。魂を組み込まれた人形、ユイを模したゲンドウの、言うなれば「道具」であった彼女は周りの人間たちとの「絆」によって人間らしさ、つまり「綾波レイ」としての「アイデンティティ」を確立しつつあった。しかし、彼女はその「絆」のために使徒と共に自爆する。爆発の直前に見せる彼女の初めての「涙」と脳裏に浮かぶゲンドウの姿は感動的であると同時に憐れである。そして復活するレイ。元の人形に戻ったはずの彼女は、壊そうとしたゲンドウの眼鏡を見てまたも涙する。心と共に表情にも変化が現れているのが興味深い。実はこの変化が劇場版での劇的な展開へと繋がる大きな布石になっている。最後、レイのダミーボディを破壊して半狂乱でむせび泣く赤木リツコ山口由里子の鬼気迫る演技が凄い。

[我的EVA言行録]

「たぶん、私は三人目だと思うから」by綾波レイ


第弐拾四話「最後のシ者」(英題:The Beginning and the End, or "Knockin' on Heaven's Door")

フィフスチルドレン・渚カヲルの一人舞台的なエピソード。まずはメインタイトル。「使者」と「死者」の意が込められていて、かつ「シ」と「者」を合わせて「渚」になるという凝った仕掛けが面白い。さて渚カヲル。1話だけの登場ながら存在感は際立っている。超然たる態度、膨大な知識、独特の言い回し、だが、最も特筆すべきはシンジとのホモセクシャルな関係だろう。ここで一挙に女性ファンをも獲得しようとする製作側の意図はイヤらしいと言えばイヤらしいが、同性愛的ニュアンスは話の展開をよりドラマティックにする上で欠かせない要素であることは確かだ。「第九」の合唱をバックに初号機と弐号機が組み合う戦闘シーンは作品中でも屈指の名場面。そして、その荘厳な歌声と共にカヲルと初号機が見詰め合う長い長い静止ショット。あまりに静かな雰囲気が却ってシンジの凄まじい内面の葛藤を感じさせる実に巧みな演出と言えるだろう。英題は「始まりと終わり。または"天国の扉を叩く"」という意味。渚カヲルによるターミナル・ドグマへの進入とアダム(実はリリス)への接触を指していると思われる。

[我的EVA言行録]

「そうか、そういうことかリリン」by渚カヲル