『ボウリング・フォー・コロンバイン』

監督:マイケル・ムーア

過剰な報道によって恐怖の念を増幅させていくマスコミと同じ方法を用いた映画によって銃社会アメリカへの批難の念を増幅させるべく仕向けるマイケル・ムーアの危ないドキュメンタリー。過激な毒を撒き散らす黒い笑い。暴力によって積み重ねられてきた「アメリカ民主主義」の近代史、その映像にはサッチモの「この素晴らしき世界」が被さり、兵器メーカー社員の力強い言葉は工廠内に掲げられたある一文で瞬時に矛盾と欺瞞の虚言となる。そしてアニメで描かれるアメリカ建国史のエゲツなさたるや!これはもう笑うに笑えない。最後はあのチャールトン・ヘストンを完璧な悪に仕立て上げてしまう。ヘストン邸の中へ堂々と歩を進めるマイケル・ムーアの後姿はまさにヒーローそのもの(これはその後に捉えられるヘストンの後姿と見事な対比になっている)。非常に恣意性の強いドキュメンタリーではあるけれど、本作が観る者に刷り込もうとする諸々の事柄は、とても有意義で痛快なものだった。それにしても、6歳の子が6歳の子を撃ち殺す世の中って・・・。先日、銃規制のある日本では小学生の少女が小学生の少女をカッターで切り殺す事件が起きてしまった。