『人間は何を食べてきたか 第8巻』

いよいよ最終巻。まず1本目。現在、生産量の9割が家畜のエサとして使用されているトウモロコシを主食とする中米インディオの生活を紹介。食事の中心はトルティーヤというインドのナンのような物とマメのスープ、このメニューは365日変わることがありません。極めてシンプル。逆に言えば、人間が生きていくにはそれだけで十分なんだということですよね。ここでも世界中のあらゆる食材と料理が楽しめる日本とのあまりの違いに茫然とさせられます。そして究極的に工業化されたアメリカのトウモロコシ栽培の様子を捉えた映像、この人間生活の両極端には瞠目し沈黙せざるを得ませんでした。2本目は雑穀を命の糧としているアフリカ・トーゴ共和国のランバ族、そのとある大家族を紹介。彼らの食事もやはり質素にして単純。モロコシ等の雑穀を粉状にしてモチのように練ったものを、オクラや唐辛子をすり潰して作ったソースに付けて食べる、それだけです。他の料理や食材などはありません。これが毎日、毎食、一年間変わることなく続いていくんですよね。グルメなどとは全く無縁対極の世界、何とか生きていくための食であって、それ以上でもそれ以下でもない・・・何やらクラクラしてきます。また、ササゲという豆を売りに片道30kmもある市場へ、20キロの荷物を楽々頭上に乗せて歩いて行く若い女性たちの姿も印象的でした。これによって得た現金で、塩や砂糖や薬を買うのですが、そんな彼女たちのささやかな楽しみが、小さなアイス・キャンディを買って食べることなのですから、その逞しくも慎ましい様子には心を揺さぶられるものがあります。